なぜなにアラブ

 アラブって何?という方へ、手助けになれば幸いです。


アラブ系競走(アラブ競馬)ってどんな競馬?
 現在、日本国内で合法的に馬券を発売している競馬は、使われている馬によって3つに分類できます。1つは皆さんよくご存知のサラブレッドによる競馬(サラブレッド系平地及び障害競走)、2つ目は北海道で行われている重種馬を使ったばんえい競馬、そしてアングロアラブと呼ばれる馬たちを使って行われるのがアラブ系競走です。現在は地方競馬でのみ行われていますが、かつては中央競馬(JRA)でも行なわれていました。ちなみに外国ではフランスやトルコなどでアングロアラブを使った競走が行なわれているそうです。


アングロアラブってどんなお馬さん?
 単に「アラブ」だけだと本来は純血アラブ(アラブ原産の軽種馬の品種、サラブレッドとは多少異なる外見をしています)の事を指します。この純血アラブとサラブレッドとの混血がアングロアラブと呼ばれる馬です。なお、血統における純血アラブの割合(アラブ血量と言います)が25%以上無いとアラブ系競走に出走できません。素人にはサラブレッドと変わらない外見をしていますが、サラブレッドと比べタフで飼育の手間が少なく、持久力にも優れています。しかも気性が従順。(個体差はあるでしょうが)その代わり、スピードではサラブレッドにやや劣ります。なお競馬において「アラブ」は、このアングロアラブの事を指す場合がほとんどです。

なぜアラブを使って競馬をしているの?
 アラブは上にあげた特徴から戦前は軍馬として重宝され、軍馬の改良と鍛錬を目的としてアラブ競馬は始められました。戦後、軍馬としての需要はなくなりましたが、代わりに競馬が復活し競走馬としての需要が発生しました。戦時中はサラブレッド以上に生産されていたので数が比較的確保しやすかったというのもあるでしょうが、何よりタフでサラブレッド以上に数多く競走に使うことができる事とサラブレッドに比べて維持がある程度しやすかった事から、馬・物・人、全てが不足していた当時の競馬においては欠かせない存在でした。

 競馬の発展に伴いサラブレッドの頭数も増え、豊富な馬と少ない開催日数、加えて「日本競馬の国際化」を目指す中央競馬(JRA)においては「国際標準」ではないアラブ競馬は衰退してしまいましたが、小規模で限られた所属馬と人手で多くの開催日数をこなさなければならない地方競馬においては、競馬運営を支える大事な存在として長く重宝されました。

 地方競馬に疎い人にはピンとこないかもしれませんが、大抵の地方競馬は競輪や競艇のように主催者から開催ごとにレースを”配分”される形のため、コンスタントに出走することを半ば義務付けられています。(出走辞退することも可能ですが、あんまり長くレースに出ないと少々ペナルティがあります。)加えて、小規模な競馬場になると、厩舎側にとっては賞金が安いのでコンスタントにレースに出て稼がないと飼葉代が出ない、主催者にとっては所属馬が少ないので毎開催出てもらわないとレースが満足に編成できないという双方の事情で、下級条件馬など中1週間隔での出走が当たり前になっていたりします。こんなハードな競馬をこなすには、アラブの存在は欠かせないのですが・・・。


アラブ競馬をあまり見かけませんが?
 日本のアラブ競馬は1990年代後半から急速に衰退し、JRAで1995年、地方競馬最大手の大井競馬(東京)で1996年にアラブ系競走は廃止され、これに追随する形で南関東4競馬場(大井・川崎・船橋・浦和)全てで1990年代が終わる頃にはアラブが見られなくなりました。岩手競馬、宇都宮競馬、足利競馬、高崎競馬でも21世紀を前にアラブ系競走は廃止され、21世紀に入ると今度は競馬場そのものが廃止となる所が現れ始め、これまで中津、新潟、益田、上山、そしてすでにアラブ系競走を廃止していた足利と、5つもの競馬場が廃止されています。

 この他、兵庫(園田・姫路)、笠松、佐賀、金沢でもアラブの新馬デビューが終了し、アラブ系競走廃止を待つ段階となっています。このように、今や地方競馬でもアラブが走っている競馬場は少数派となりつつあり、アラブを走っているのを見たことが無い競馬ファン、中にはアラブそのものを知らない競馬ファンも多いと聞き及んでいます。

 アラブ競馬、そして地方競馬の衰退によりアラブ生産数も衰退の一途をたどり、ほとんどの競馬場でアラブが見られなくなる日が間近に迫りつつあります。いつまでアラブ系競走が編成できるか・・・今一番の心配は、今後生まれてくる馬たちに走る場所があるのか、という事です。




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